ベンチャーズサウンドだった。
まあ、確かに本当のプロなんか呼ぶにはお金がかかるし、アマチュアでも激しい音楽ではファンがおっかないので確かに無難なバンドである。別に耳触りと思う人も少ないだろうし。ただ、僕には耳障りなサウンドなので、極力ビアガーデンに配置されないようにしていた。
しかし、所詮アルバイト。お上に逆らうわけには行かない。かなりビアガーデンに配属されてかなりのアマチュアベンチャーズサウンドを聴かされた。2,3曲ならベンチャーズの曲も覚えてしまった。ウンザリである。
ただ、唯一素晴らしいバンドがあった。というより笑えるバンドだ。今回は長い前フリだがそのバンドについて紹介しようと思う。
スウィート・ベンチャーズと言うバンドだ。確かにベンチャーズサウンドのバンドなのだが、このバンドはベンチャーズ風にリードギター、サイドギター、ベース、ドラムの4人編成ではなく、もう一人
ナレーションがいる。
マイクとタンバリンを持って、常に色んな事を言っている。「さあ、次のナンバーは・・・」は基本で、「レッツ、ショウタイム!」とか叫んでいる。しかもバンド紹介をした時に、
自分を「コーラス」と紹介していた。
その時点で僕は笑いそうになっていた。しかし、アルバイトである以上、大笑いするわけにもいかない。必死になって笑いをこらえていた。
しかし、その後バンドがダンスナンバーを演奏した時に、彼はマイクで、
「さあ、次はここがダンスホールになります。レッツ、ダンシング!
と言っていた。僕はこらえきれずに笑ってしまった。
ビアガーデンで踊るやつがいるかって!!
僕はそう考えていたが、既にサクラを仕込んでいたらしく、曲につられて踊り出すやつが出てきた。40くらいのオヤジが。しかも社交ダンスやモンキーダンスで。それを見てナレーションの人は、
「盛り上がりに耐えられず踊り出す人が出てきました。皆でダンスタイム!!」
と叫んでいた。もう駄目だ。大笑いさせてもらうぞ。僕は周りを気にせずに大笑いした。また、このナレーションの後で誰一人踊り出さない所が大笑いを誘った。僕が踊り出そうかと思ったほどだ。それ以上に、僕がかりにバンドを組んでも僕はこんな恥ずかしいパートにつきたくない。彼はきっと、ライブの前に覚醒剤を一本打っているのだろう。そうとしか思えないほどハイテンションであった。
8月も終わり、スウィート・ベンチャーズもどこに行ったのか分からない。きっと今でもどこかのライブハウスで活動をしているのだろう。誰かスウィート・ベンチャーズと言うアマチュアバンドの消息を知っている人がいたら教えて下さい。追っかけもいるし演奏技術も優れたバンドです。