覚障害者と情報保障


手話との出会い。難聴者の手話と聾者の手話
 私と手話との出会いは12年ほど前、千葉県中途失聴・難聴者協会に入会した時です。難聴者の手話は、言葉を話しながらその語順のまま手指を動かすもので、かなりゆっくりした分かりやすい手話(日本語対応手話)でした。
 その後、柏市の主催による手話講習会に参加して、聾者の講師からも手話を学びました。聾者の手話は動きが速く、表情や身振りなど上半身全体を使って非常に豊かに表現をします。聾者間の手話(日本語手話)による会話は、話し言葉の語順とは異なる場合があるので、たとえ手話を習った健聴者や難聴者でも、読み取りはかなり困難でしょう。
 手話講習会を終了した人の多くは地域の手話サークルに入り、手話の研鑽を積みボランティア活動を行っています。
 中途失聴・難聴者は、系統的な手話教育を受けた方が少ないこと、高齢者が多いこと、補聴器を使っている人が多いことなど個人差が大きく、コミュニケーションを手話だけに頼ろうとしないので手話の習得はかなり困難です。でも継続することにより少しずつ手話に慣れていく様子は窺えます。
手話はサインによる言葉というのが適当
 手話は英語では Sign Language といい、手指を使う言葉というより、サイン(信号、記号)による言葉という方が適当かと思います。「山」、「川」、「美しい」、「楽しい」、「歩く」、「食べる」など、それぞれの単語(日本語)に対応したサインがあります。そして一つのサインには、状況に応じいくつかの意味を持たせます。たとえば、「今日」、「今」、「ここ」などは同じサイン、「出来る」、「大丈夫」も同じサイン、「必要」、「義務」も同じサインなど。そしてそのサインに表情や身振りを付け加えて、疑問文、感嘆文、命令文にしたり、丁寧語にしたり多様に表現します。
 また手話には50音のかな、数字、アルファベットに相当する指文字があります。これは習得すると非常に便利で、「何月何日何時に会いましょう」、とか人の名前や地名を指文字で表現することができます。
手話は国ごとに異なる
 世界的に見ると、手話は国ごとに異なり、アメリカ手話(ASL)、イギリス手話(BSL)、フランス手話(LSF)などがあります。また国際会議などでは国際手話(ISL)が用いられ、各国の手話通訳者が、それぞれの国の手話に通訳していて賑やかです。実際の国際交流ではアメリカ手話が主流です。それはアメリカのワシントン市に聾者のためのギャロデット大学(Gallaudet University)があり、各国から留学生を受け入れています。彼らが自国に帰って、アメリカ手話を普及しているからです。日本も同様でアメリカ手話の教室がいくつかあります。私も新宿の聴力障害者情報文化センターで、この手話を少し学びました。
聴覚障害者の情報手段は手話と要約筆記
 聴覚障害者にとって、講演会・会議・病院の診察などでのコミュニケーションを図るには、何らかの情報保障が必要になります。
 情報保障は大きく分けて、手話と要約筆記があります。
 聾者や手話を自由に使える難聴者にとっての情報保障は手話が最も有効です。
 一方、多くの中途失聴・難聴者は前述したように、後天的に聴覚障害者になった人達で系統的に手話の学習をしていないので、手話だけでは難しいです。
 会議などでは、要約筆記者が要約した内容をOHPに映し出す方法が採られます。これは確実に内容が目で捉えられるからです。話し手も要約筆記者がいるとゆっくり話してくれます。
 診察など個人的な場合も要約筆記者によるノートテイク(医者の云うことをメモ帳に書く)に頼ったりします。
 情報保障はこの他にもいろいろあり、例えば字幕付きのTV放送は非常に有難く、最新のニュースを知りドラマも楽しめます。いくつかの旅行会社では、海外旅行の際イヤホーン付きのガイドを採用していますが、これも雑音がカットされ音声が直接耳に入りますので難聴者に有効です。
情報保障は聴覚障害者の社会進出を助ける
 私の周りの難聴者は年々高齢化していきます。加齢につれて難聴者も増えていきます。聴覚障害者も情報保障の助けを得て少しずつ社会進出ができるようになってきたように思います。健聴者も聴覚障害者も手軽に手話やノートテイクなどを通じ、気軽に意志疎通ができるようになれば良いと思っています。
2009.2.1 清水 愛子
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(090210追加)